羊の宇宙 -たむらしげる,夢枕 獏
羊の宇宙 著者:たむら しげる,夢枕 獏 |
ネタバレの内容を書いちゃってます。あしからず。
やさしいことを、難しく説明するのは誰でもできる。
難しいことを、簡単に説明できる人ほど、それについて理解している人だ、と、仕事についてから、つくづく感じています。
仕事で英文のメールを書いたとき、うまく表現できない部分を同僚に聞きました。
私の英文をみたうえで、さらさらと英文を書きながら、いいました。
「あんまり上手に書くと難しい内容の返事がくるから、この程度の書き方にしておきますね。」
...正直、心の底から感動しました。
ただ中途半端に英語が得意な人に頼んだら、絶対にでてこない配慮です。
彼はそういえば、何ヶ国語もあやつる帰国子女でした。
「羊の宇宙」は、本来、短編集におさめられていました。
当時は挿絵も何もなかったけど、簡単にイメージできる、美しい風景。
場所は山脈のとある草原。
そこにいるカザフ族の羊飼いの少年。彼をきまぐれにたずねた、あまりに有名な老物理学者。
二人はその草原で、時間や宇宙観について語ります。
老物理学者はチャーミング。
彼は物理も宗教も数学も、つきつめると同じ真理にたどりつく、といい、おつきの者に問われて答えます。
「人は皆、誰にはばかることなく幸せになってもいいのだ」
カザフ族の羊飼いの少年は、羊をみながら考えることが大好き。
物理学者に宇宙について答えます。
「この宇宙はね、羊と羊じゃないものからできているんだよ。」
老物理学者はもちろん天才だけど、この羊飼いの少年も天才。
天才同士の会話は、とてもとても易しい言葉でかわされる。
この話のシチュエーションも、登場人物も、もちろん内容も、私のお気に入りの一つです。
「この宇宙は、羊と羊じゃないものからできている」
宇宙をあらわす説明で、これ以上の素敵な言葉はしりません。
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コメント
たぶん 分類すると「羊」の方に入る音楽をTBしました。
世界がよ~くみえるというコトに最近気がつきました。自分が進化したのか心がニュートラルになったからなのか、わからないけれど。
「羊の宇宙」の作者 たむらしげる氏のきれいなアニメを観たことがあります。
投稿: チャーリー | 2006年8月14日 (月) 04時39分
>チャーリーさん
コメント&TBありがとうございます。
この「羊の宇宙」、絵本の体裁をとっていますが、哲学書といってもいいほど、奥が深い。
絵本の方はたむらしげるさんの絵もとてもすばらしい。
文章だけでよければ夢枕獏氏の文春文庫「鳥葬の山」に入っています。機会があればぜひ。
タピオラ幻景、教えてくれてありがとうございます。探して、聴いてみますね。
投稿: ももんが | 2006年8月14日 (月) 13時15分
ももんが さんへ
文藝春秋刊の『羊の宇宙』、入手しましたよ。復刻されて2005年の4月に再販されたものです。
きれいなカラーの絵(たむらしげる さん)が載っています。
今度の週末、読んでみますね。チャーリーは勉強家なんです。
投稿: チャーリー | 2006年8月18日 (金) 00時10分
>チャーリーさん
うわー。なんだかすごくうれしいです。
気に入っていただけるといいのですが。と書きつつ、きっと、気に入ってくれると信じてます。
それくらい、大好きな本なので。
投稿: ももんが | 2006年8月18日 (金) 00時49分
ももんがさん
気に入りました。TBさせて頂きましたが、今日のお昼のことで記事に感想を書きました。ももんがさんのblogを紹介してるのですが、もしお嫌であれば、おっしゃってくださいね。
投稿: チャーリー | 2006年8月19日 (土) 22時23分
>チャーリーさん
TB&素敵なブログ記事、ありがとうございます。光栄です。
投稿: ももんが | 2006年8月20日 (日) 00時47分