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2006年9月30日 (土)

家守綺譚 -梨木 香歩

家守綺譚 Book 家守綺譚

著者:梨木 香歩
販売元:新潮社
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文庫化されてます

 東と西の二方が垣根で区切られているせいなのか、種々雑多な木が生い茂っているからなのか、その場所だけがいつもひんやりと湿り気がある。

 そこに毎年、律儀に生えるきのこがある。

 巨大なマッシュルームとしかいいようのない、そのきのこは冗談ではなく私の頭より大きい。

 誰もそれがなんなのか調べたことはない。

 

 坪庭には見立ての橋がかかっている。無粋にも、その橋の下に本当に水を引こうとした父に逆らうようにして、庭はその年から苔むしはじめ、今では立派な苔で埋め尽くされている。

 綺麗だね、と思うだけだ。

  

 昔の家にしてはめずらしい大きな玄関の戸は、格子戸だが障子ではなく、すりガラスが入っている。そのすりガラスにはいつも、人の影が落ちている。

 昼間は外の光をうけ、夜は外灯の光をあびて、少々背の低い人影はいつまでも誰かがあけてくれるのを待っているかのようだ。

 気味が悪いね、といいつつ、誰もとりかえようともしない。

 

 一人で留守番をしていると、時折、梁がぎしっとなる。無視して本を読み続けると、梁ばかりでなく、柱もみしみしいい始める。奥座敷からガタガタ音がするときもある。

 古いのだから仕方がない、としか思ったことはない。

 

  かように、古い家にはよくわからない事が起こる。ただ、わからないだけで不思議ではない。よくあることだ。

 「家守綺譚」の主人公も、そうやってうけながす。驚くよりも、受け入れる。そういう事もあるのだろう、と、思うと、何も不思議なことはない。

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