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2006年11月 8日 (水)

北原白秋詩集 -北原白秋

北原白秋詩集 Book 北原白秋詩集

著者:北原 白秋
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青春でも、朱夏でも、玄冬でもなく

 蔓薔薇の茂るバラ園ならば、「野中の薔薇」が似合うだろう。
 けれど、庭の隅にひっそりと植えられたような薔薇の木には、白秋の「薔薇二曲」がふさわしい。
 
 今、住んでいる部屋からみえる、小さな庭にも薔薇の木が一本だけ植えてある。
 折れ曲がりながら伸びている枝は支柱にもたれかかって、丈だけが高い。
 蔓薔薇ならばともかく、普通の薔薇は一本だけではみすぼらしい。
 でも、そのみすぼらしさは、この貧相な庭にお似合いで、ひいては居住者である私をあらわしているようで、なんとなくいつも見てみぬふりをしてしまう。
 
 それでも、薔薇は咲く。
 季節を問わず、何の前触れもなく、ある朝ふいに貧弱な枝の先端に一輪だけ花をつける。
 その枝ぶりには不自然なほど堂々とした薔薇の花を前にして、意表をつかれた私は自分を恥じるような、なんともいいようのない気持ちになる。
 その薔薇を見るたびに感じる、とまどいを含んだ気持ちは言葉にならず、ただ、白秋の歌を思い出す。
 「薔薇ノ木ニ
  薔薇ノ花サク
  ナニゴトノ不思議ナケレド」
 
 今朝、久しぶりに薔薇が咲いていた。
 柔らかな色をした薔薇は、薄曇りの朝の、ほの暗さの下で、これ以上ないくらいの気品をただよわせているようだった。
 いつもは思い出さない、二編目を思い出した。
 「薔薇ノ花。
  ナニゴトノ不思議ナケレド。
  照リ極マレバ 木ヨリコボルル
  光コボルル。」

 まったくもって、白秋にはかなわない。

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