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2009年5月26日 (火)

ブラック:ティー ー山本文緒

ブラック・ティー
バラの名前です

 小学生の頃、近所の酒屋でお菓子を万引きしていました。

 していました。つまり、一度や二度ではありません。でも10回には満たない回数だったと思います。

 手に入れたお菓子は、100円未満の駄菓子です。小学生にとって、100円以上のお菓子は高価で、恐れ多かった。

 万引きは犯罪ですが、もしお金を払っていたとしても、家にもって帰ってばれたら、買い食いの罪です。つまり、そのお菓子は二重の罪をもつものでした。

 お小遣いをもらっていなかったといえど、駄菓子を買うくらいのお金はありました。スリルを求めていたわけでもありません。

 第一、顔見知りの近所のお店です。もしかしたら、お店の人は知っていたのかもしれません。

 

 この本は、そういう、自分にとって心苦しい罪の数々を思い出させる短編ばかり。

 犯罪になるもの、犯罪ではないもの、そのどちらの場合も、主人公の心の奥底で、「悪いこと」と知っている、もしくは思っているが共通点。

 誰だって、思い出すとチクリと痛い罪がある。それは棘で、決して針のようではないけれど、でも、決して抜けない。

 その棘は皆がもっている。でも、だからといって正当化されはしない、あくまで個人的な痛み。それを抱えて、皆、生きている。

 山本さんの本は、いつもそうだ。やりきれないものを直視させる。

 

 小学生の私はある日、決心して、万引きにいっていたお店にいった。

 そしてお菓子の並ぶ棚のすみに、500円札をたたんで置いてきた。

 罪滅ぼしのつもりのその行為すら、最後まで正直に謝れなかった卑怯な思い出として、今、棘になっている。

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2009年5月14日 (木)

いぬのえいが

Movie / いぬのえいがプレミアム・エディション

最後の話は卑怯なほどあたたかい

 ものごころついた頃に飼っていた犬は二匹。

 一匹は凶暴で、祖父以外にはなつかなかった。

 一匹は滅多に散歩には連れて行かず、時折、父が鎖を外してあげると、半日はあちこち遊んで飛び回っていた。

 その次の犬は散歩ぎらい。散歩に行こうとすると、降参のポーズで拒否をした。

  

 そんな事を、この映画をみると、つらつらと思い出す。

 オムニバス形式で、きちんとストーリーがあるのに、頭の中ではストーリーと平行して自分自身の犬との思い出が流れていく。

 ペットを飼った人ならば。それがたとえ犬でなくとも、きっと同じ気持ちになるはず。

 

 今、実家には、白内障を病んでいる犬と、フィラリアになってしまった犬がいる。

 彼らは、それでも帰省するたび、尻尾をふってとびついてくる。嬉しいを全身で表現するその姿。

 それを思い出して、泣く日はきっとくるだろう。

 それでもきっと、「もうペットは飼わない」とは思わない。

 泣きながら、「飼わなければよかった」と思うことが絶対ないのと同じだもの。

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2009年5月13日 (水)

沖で待つ -絲山 秋子

沖で待つ (文春文庫)

友情が生まれる最後のチャンス

 転職をしてしまっているので、職場の同期、というものに縁がありません。

 全くないわけではないです。最初にした仕事の同期とは年賀状のやりとりは、かろうじてしている程度です。

 ただ、その職自体、普段の業務では同期と接触することはゼロに近い職だったので、同期と仕事をする機会はありませんでした。

 今、同じ職場の新人の子が、同期と飲みに行く、という話をしているのを聞くとうらやましく思います。

 学生時代のノリと、社会人、特に同じ空間にいるという立場を同時にかねそなえている相手は、おそらく同期しかないと思うから。

 

 「沖で待つ」はそうした同期との友情の物語。

 プライベートを細かく相談するほど仲がよいわけでなく、仕事の愚痴を事細かく言ってしまえるほど距離が近いわけでもなく。

 なのに、誰よりも心情が、多分「なんとなく」察してもらえる相手。誰よりも仕事について気軽に「お願い」できる相手。

 新卒で入った会社でしか作れない、そんな友情を淡々と、でも丁寧に書かれている。

 同期っていいな。

 新人の話を聞いているよりもリアルにそう思いました。私のように、年賀状のやりとりだけでは、築き上げられない確かな信頼。それを育てられるチャンスを持っている新人が、もっとうらやましく感じてしまう。

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2009年5月 9日 (土)

チェブラーシカ

チェブラーシカ
もの悲しいBGMが、アンバランス

 ソニープラザなどのお店にいくと、ちょっとマイナーなアニメや絵本のキャラクターのグッズが売ってます。

 しかも最近は、原作の絵がちゃんと使われてる。

 子供の頃、妙にデフォルメされたムーミンやピーターパンをみて腹をたてていたので、この傾向は大変嬉しい。

 嬉しいけれど、少し悔しい。

 原作を知らないまま、ただかわいいといって買っていく人を、捕まえて説得したい。

 このキャラクター達はかわいいだけじゃなくて、本当に素敵なんだよ、と。

 「ひとまねござる」、「タンタン」、もちろん「ムーミン」も、原作があるんだよ。読んであげてよ、と。

 元ネタを知っているということだけで、上から目線になってしまう自分を反省しつつ、でも本当にいつも思う。

 この子達の本当の魅力をみんなが知ってくれればいいのに、と。

 

 チェブラーシカも、最初はグッズで知りました。

 ロシアの、有名なキャラクターなんてそれまでは知らず、ネットで調べて原作は人形アニメとしり、DVDを借りてみました。

 なんてキュート。

 自分で「正体不明」と名乗るチェブラーシカは、たどたどしい?ロシア語と、たどたどしい歩き方がすごくかわいい。

 動物園で「ワニ」として働く、立派なワニのゲーナさんはものすごく優しいく、いじわるな婆さんのいじわるっぷりは、衣装と同じに素敵に粋でかっこいい。

 BGMが何故だか少し寂しげで、でもその寂しさは郷愁に近い寂しさで、それがまた、ちょっといいな、と思ってしまう。

 

 だからやっぱり原作って大事。

 相手を理解するってことは人に限った話じゃないのだ。

 だって、最初にグッズでみたときは「ただのサル」と思っていたチェブラーシカ。DVDをみた後では「チェブラーシカ」として愛しく思わずにはいられないもの。

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2009年5月 8日 (金)

ねこは猫の夢を見る -ねこ新聞編集部

ねこは猫の夢を見る  /『ねこ新聞』編集部/監修 [本]

持ってはないけど欲しいです

 散歩の途中で見つけた本屋に売っていました。

 月刊 「ねこ新聞」。

 A4版8ページほどの新聞です。何かの特別版で発売されたものかと思ったら、ちゃんと新聞。そのお店ではバックナンバーも扱っていました。

 バックナンバーのうち、「100年目の吾輩ハ猫デアル」特集のものを買って帰りました。理由はその号の表紙の猫が気に入ったから。

 

 手に入れていないので予測でしかないのですが、この「ねこは猫の夢を見る」は、このねこ新聞の毎号の表紙を飾っている画と詩の組み合わせをまとめたもののようです。

 バックナンバーとしてみた表紙はどれも魅力的な画で、そしてその画にふさわしい詩が確実にチョイスされてました。それをまとめた画集なら、猫好きにはたまらないに決まってる。

 

 ところでねこ新聞。私が知らなかっただけで有名なようで、ぐぐったら何千件もヒットしました。

 ねこ新聞の公式HPもありました。(ねこ新聞 HP

 ちなみにねこ新聞も公式HPも、猫が集まってくるような、柔らかく、あたたかく、ひだまりのような印象です。

 これを購読されている方たちが多くいる。そう思う、それだけで世の中まで暖かく感じて嬉しくなる。

 それくらい、ゆったり、のんびり。つまり、猫みたいな新聞なのでした。

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2009年5月 6日 (水)

SAW

ソウ [DVD]
あくまでミステリー

 SAW5がDVD化されたので、ようやくみました。

 おもしろくなかった、とは言いません。そこそこ面白かった。

 けれど、私が望んでいたのは、Part1の頭脳ゲームとしての話。悲しいけれど、シリーズが続くほどに、残虐性が増して、反比例するように心理戦部分が減っている。

 

 見知らぬ男二人が、目を覚ますと鎖につながれ、目の前に死体が一つ。

 「ゲームをはじめよう」

 そう伝えるテープレコーダー。

 ミステリーファンをわくわくさせるオープニング。そして期待を裏切らないラストシーン。

 残虐性も確かにあるけれど、それはあくまで脇役だったのに。

 

 面白いものはずっとみていたい。けれどシリーズものは劣化する。

 期待する分、ハードルが高いのは仕方ないのかもしれないけれど、でも、やっぱり。

 せめて、がっかりはさせてほしくないものだ。

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