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2009年9月13日 (日)

獣の奏者 -上橋 菜穂子

獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)

著者:上橋 菜穂子

獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)

どの世界でも、痛みは同じ

 なんて、まっすぐに、世界の矛盾にむきあう小説だろう。怖いくらいだ。

 最初に「守人」シリーズを読んだ時には、それはかすかに感じるくらいでしたが、この「獣の奏者」ははっきりと感じました。

 ファンタジーと呼ばれるものを読んで怖い、と思ったのは、荻原規子さんの「空色勾玉」以来です。あの話を読んだ時に感じた不安感。

 世界には、知らずに目をつむっていた矛盾があることを指摘される。安定した世界だと思っていたのに、実はそうではない、と気づかされる。

 知らずに当たり前だと思って行っていることが、相手にとっては残酷であることに気づかされる。それがたとえ、獣であっても。

 

 「獣の奏者」は、一人の少女の話です。

 「闘蛇」と呼ばれる獣を操る村で育ち、後に「王獣」という、誰をも慣らしたことがない獣を心を通わせてゆく。

 その彼女を利用する者がいる。また、彼女の行為を禁忌とする一族がいる。

 彼女はそのどちらも良しとはせず、自分の信じた道をゆく。

 決して、自分勝手ではなく、自身も矛盾を抱えながら、彼女は決めた道を歩いてゆく。どんなの険しくても。

 

 私が感じた不安の正体は、きっと自分の卑怯さ、臆病さ。

 人から与えられている世界を、疑問に思わず受け止めている、その事実に気づいたからに他ならない。

 つむっていた目を開くのは痛いし、怖い。 開いてみえる景色が素晴らしい事は本当に少ない。

 でも、開かないと、美しい景色もみえないのだ。

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