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2011年9月22日 (木)

初恋 -中原みすず

初恋 (新潮文庫)
3億円事件そのものは重要ではない

 女の子はおそらく誰でもそうかもしれないけれど、大切な人との思い出は、何度も何度も反芻するものだ。
 
 反芻するうちに、美化してしまったりもするだろう。
 
 繰り返す度に、追加情報として周りの景色やお店の雰囲気なども一緒にイメージするだろう。
 
 そして、反芻するから、思い出も自分の気持ちも、ずっと忘れられず鮮やかになってゆく。
 
 私もそうだった。
 
 大事な大事な思い出を、何度も繰り返した。そのうち、思い出すたびに感じる痛みまでもが大事に思えて、痛む気持ちがなくならないように思い出すのを控えたほど。
 
 でも忘れてしまうのは怖いので、思い出すのを控える代わりに、それを文章にした。
 
 日記ではなく、記録風に。ただ、自分が感じた事は克明に。思い出を書くわけではなく、それを読んで、思い出がよみがえるように書いた気がする。
 
 
 「初恋」は、著者と同じ氏名の「中原みすず」さんが、「3億円事件を実行した経緯」も含めた高校時代から大学時代までの手記です。
 
 女子高校生が3億円事件の実行犯だった、というこの内容は、出版した当時話題になったようですが、当時は読んでいませんでした。
 
 同名で映画化されていて、そちらを観て興味を覚えて読みました。
 
 彼女が本当に実行犯かどうかは兎も角、ここにつづられている内容はほとんど実際にあった出来事であろうと、私は感じました。
 
 だって文章の雰囲気が、私が書いた思い出の記録によく似ている。何度も反芻した思い出である事が、はっきりわかる。
 
 「B」での仲間との出会い。「岸」さんとのやりとり。事件実行までの経緯。その後の事。その全てに彼女は感じた事をはっきりと残してるから。
 
 
 ただ、読んであんまり切ないので、彼女が書いたとおり、この手記を上梓した事を機に、「私から解放されている事」をひたすら願ってしまう。
 
 彼女が書いているとおり、心の時効はないにせよ、思い出を反芻するのはそれはもう麻薬のようなもので、愛しくて、次に進む根性を奪うものだと私は思うから。
 

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